「広い世間」とトラブル 3

「同じ○○線で帰る」・・・


その先には「家庭」があり、その家庭から明朝出勤しなければならない「職場」があります。


喧嘩がこうじて、傷害にでもなれば、家族に心配をかけるし、警察沙汰にでもなれば、「狭い世間」に迷惑がかかり、自分も信用を失いかねないのです。


「同じ○○線で帰る仲」という「とめ言葉」は、この「狭い世間」を覚醒させる力をもっていたのです。


「赤の他人」同士ではいとも簡単に起こったこぜり合いを収拾したのは暴力的決済でも警察の規制でもなく「狭い世間」の抑制力でした。


ともすれば、「狭い世間」をもたない個人は「広い世間」でトラブルを起こしても気にならない可能性があります。


「狭い世間」は秩序感覚を育てる場でもあるといえるかもしれないのです。


「親子関係」を申心にして「狭い世間」があり、その外に「広い世間」がひろがっていると考えれば、日本人にはふたとおりの「他人」がいることになりますが、実はもう一様の他人がいると考えられます。


それが「外国人」(ノン・ジャパニーズ、日本人でない人)です。


「広い世間」とトラブル 2

背広姿のサラリーマンが駅のホームで、「お前が押した」「お前がこずいた」とどなり合い、つかみ合いの喧嘩になった現場を目撃したことがありました。


家路をいそぐ人びとは、「バカだな」という顔をしながら、とめには入らないのです。


ところが、駅員よりも早くある年配者が一人とめに入りました。


その「とめ言葉」がおもしろかったのです。


「きみたち二人とも、この同じ○○線で帰るんだろ。


同じ○○線で帰る仲じゃないか。


なにが原因か知らないが、喧嘩するのはやめなさいよ」


・・・といったのです。


「同じ○○線で帰る仲」なんていわれても、しょせんは「赤の他人同士」、同じ○○線で帰ることが喧嘩をやめる理由にはなりそうにもないのです。


・・・しかし、この「とめ言葉」は効いたのです。

「広い世間」とトラブル

「狭い世間」の外側にさらにひろがっているのが「広い世間」で、そこは心(情)通じず、遠慮もいらない「赤の他人」の世界です。


「赤の他人」という場合の「赤」は、「赤恥」とか「赤はだか」という用法と同様に「それ以外の何ものでもない」の意で、「まったくの」とか「ひどい」という意味です。


まったくの他人は、素性も分からず、どこの馬の骨か分からない、うさんくさい、見知らぬ存在です。


・・・したがって、「赤の他人」同士が事実として関係をもたざるをえないような揚合には、「旅の恥はかき捨て」のような傍若無人(そばに人がいても人がいないように)の振舞いとなるか、「花見の喧嘩」のようにけんか沙汰となる可能性を強くはらんでいます。


「赤の他人」の光景は暮しの場でいえば「ストリート・ライフ」(街中の生活)に見出しやすいでしょう。


例えば通勤で使う電車の内やホーム・通路には見知らぬ赤の他人が乗り合わせ、往来しています。


駅の階段やホームで平気で疾や唾を吐く人やタバコをふかす人、車中をなんのあいさつもなく人をおしのけて歩く人をよく見かけます。


そうした人びとの無遠慮と無粋さは「赤の他人」が集まっている「広い世間」のありさまをよく示しています。


終電近くの東京都心の駅ではよく、こぜり合いが起こりますよね。


うしろから押したとか、ぶつかったとか、足をふんだとかいったささいなことがきっかけで言い合い、言いつのり、手が出てしまうのです。


酒が入っていることも多いです。

生命の担い手 10

コラーゲンは、物質同士を結合する構造材であるため、その分子は細長い強靭な繊維状の紐で、それぞれの両端に他のコラーゲン分子と結合する部分があります。


そのため、コラーゲン分子は互いに結合して、機械的強度に優れ、しかも柔軟な、長い梁のような構造を形成します。


コラーゲンは私たちの身体の形状を決定する枢要なタンパク質です。


骨や靭帯(後者も、その主要構成物質はコラーゲン)がなかったならば、私たちの身体は形をとどめない肉の塊になってしまうでしょう。


実際、コラーゲン遺伝子の1つ(コラーゲンには、アミノ酸の配列順序が少しずつ異なる多くの種類があるので、その遺伝子の数も多い)に欠陥があると、骨形成不全症という重度の変形を伴う疾患が起こります。


体内のコラーゲン遺伝子のほんの1つの障害でも、患者に重度の変形が出現して、生後数年以内に死亡する例も多いのです。


姿かたちの決定に関与するのは、骨だけではありません。


筋肉もまた、形状を決定する主要な組織です。


筋肉の場合も、その「実質」部分のほとんどはタンパク質です。


しかし、筋肉のタンパク質と骨のタンパク質は同じものではなく、それぞれの役割も異なっています。

生命の担い手 9

たとえば、腰掛けには、最低3本の脚が必要です。


2本脚のスツールでは倒れてしまうからです。


また、自動車には車輪がついています。


スキーや木製の脚がついている車では、道路を走れないからです。


タンパク質にも同様の一般則、すなわち、すべてのタンパク質は、各自の役割に合った形状をしているという原則が存在します。

タンパク質の役割は多様です。


ある種のタンパク質は、身体の構造部材として働いています。


コラーゲンがその例です。


コラーゲンは、骨ではその構造の強化材(コラーゲンがないと、もろい構造になります)として働き、他の紐織では、細胞を支える基盤の役割を果たす重要なタンパク質です。


生命の担い手 8

すでに存在するタンパク質は分析できても、新しいタンパク質の設計図を描くことはできないのです。


タンパク質の折りたたみパターンの化学的な理山は、複雑すぎて手に負えないとはいえ、結果は単純です。


つまり、タンパク質の鎖を構成するアミノ酸ユニットの配列順序を遺伝子が決定し、アミノ酸配列順序がタンパク質の折りたたみ構造、つまり形状を決定しているのであれば、細胞がある特定の形のタンパク質を生産する必要に迫られたときには、DNAの特定領域、すなわち目的とするタンパク質のアミノ酸配列順序を規定している遺伝子がもっている情報を利用するだけで、毎回正しい形状のタンパク質をつくり出せるのです。


形状はきわめて重要です。


これは、特にアミノ酸の化学的特性と合わせて考えたときに、大きな意味があります。


・・・というのは、形状はそのタンパク質が担う役割に関係しているにちがいないからです。


工具のスパナには、長い柄の先にナットの形をした受け口がついています。


なぜならば、スパナには、ナットにひったりと合う受け口と力をかけるテコの部分が必要だからです。


つまり、ナットを締めつける道具には、何らかの受け目と力を加える手段の両方が必要不可欠ということです。


同じような一般則は、すべてのものに当てはまります。

生命の担い手 7

同じ種類のタンパク質であれば、アミノ酸の配列順序はつねに同じです。


したがって、これらのアミノ酸をきちんと組み合わせて小さな塊にする最も具合のよいやり方も同じです。


そこで、タンパク質が形づくっている塊の形は、同じタンパク質の分子であればつねに同じになります。


アミノ酸の配列順序が異なる別のタンパク質は、異なる形状の塊を形成します。石塚孝一氏によると、このように、タンパク質がとる形状は、原子が無秩序に集合しているのではなく、タンパク質自体のアミノ酸配列によって決まっているのです。


「タンパク質の形は、それ自体のアミノ酸配列によって決定される」と言うのは簡単です。


それを蹉証したクリスチャン・アンフィンセンおよび共同研究者のスタフォード・ムーアとウィリアム・スタインには、1972年度のノーベル賞が贈られました。


しかし、今日の科学者でさえ、タンパク質がそのような形状に正確に絡み合う理由を説明できないのです。


ですから、科学者は、アミノ酸の配列にもとついてタンパク質の形状へと議論を推し進めることができず、「特定の形のタンパク質を手に入れたいのだが、その正確なアミノ酸配列はこうであるにちがいない」と言うことはできないのです。

生命の担い手 6

酵素と鋳型となるDNAだけが必要となるDNAの複製とは異なり、新たなタンパク質の合成には、他の多くの分子が関与しています。


折りたたまれた形こそ重要であるタンパク質とDNAの間には、鎖を構成する輪の数や種類、その作製方法以外にも、重要な違いがあります。


DNAは、直線上に延びた分子であり、2本の鎖が互いに巻き合い、堅い針金のようにほとんど折れ曲がりがありません。


これに対して、タンパク質を構成するアミノ酸の鎖は、互いに絡み合って非対称の塊を形成しています。


DNAを堅い針金とすれば、タンパク質は、湿った紐がこぢんまりとまとまった小塊といえるでしょう。


しかし、この小塊はきわめて特異的な形をしています。


これは、タンパク質の鎖が無秩序に凝集しないからです。


アミノ酸鎖が凝集して塊になるのは、鎖を構成するアミノ酸の場合、最も結合しやすいアミノ酸同士が結合するからです。


そのため、タンパク質はそれ自体折り重なって、アミノ酸同士の間で、「適合した」(すなわち、低エネルギー状態の)結合をできるだけ多くつくるからです。

生命の担い手 5

RNAは化学的にDNAとよく似た分子であり、長く鎖状に結合した一連の塩基から構成されています。


しかし、2本の鎖が互いに絡み合って2重らせんを形成しているDNAとは異なり、一般に、RNA分子は1本鎖です。


2重らせん構造は、DNAの自己複製機構を支える最も重要な要素です。


したがって、RNAには、DNAと同じような自己複製能力はないと思われます。


事実、ほとんどすべてのRNAは、他のRNAから複製されたのではなく、DNAの塩基配列をコピーしてつくられたものです。


一般に、RNA分子の長さはDNA分子に比べてきわめて短く、1つか2つのタンパク質に関する情報を含んでいるにすぎません。


このようなRNAは、メッセンジャー(伝令)として働き、DNAが存在する核から遺伝子の塩基配列順序を他の細胞部分に伝えます。


それで、このRNAをメッセンジャーRNA(mRNA)と呼んでいます。


mRNAは、遺伝暗号を解読し、新たなタンパク質の合成を指揮する巨大な集合体・・・別のRNAとタンパク質とからなる・・・において、タンパク質に「翻訳」されます。


翻訳作業が行われる場所は、核の外の細胞内です。

生命の担い手 4

細胞がタンパク質、を合成する際には、特定の設計図に従って、しかるべきアミノ酸をしかるべき位置に正確に組み込むことができなければならないのです。


そうでないと、日的のものとはかけ離れたタンパク質をつくってしまうことになるでしょう。


設計図が必要であると述べたのですが、この点に関して、再びDNAの話に戻りましょう。


あるタイブの遺伝子に保持されている情報は、単に、特定のタンパク質をつくる方法を細胞に教えるのに必要なものです。


これがタンパク質の設計図であり、遺伝暗号に詐き込まれているものです。


こういったタイプの遺伝子は、DNAの特定領域(ほとんどつねに、もっと大きなDNA分子の一部分)に存在し、そのAGCTの配列順序が、タンパク質のつくり方を細胞に告げるのです。


細胞がこの情報を利用してタンパク質をつくり出す機構は複雑ですが、その概要は単純です。


まず最初に、DNAがRNA(リボ核酸)と呼ばれるもう1つの分子に転写されます。

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